フィナーレは鳴り止まない

世界と終わらない恋をしている

止まない拍手が耳から離れない。──ミュージカル憂国のモリアーティOp.2-大英帝国の醜聞-



〝奏でよう、闇のオペラを〟 


闇のオペラを彩る旋律の一人になりたい。 

ミュージカル憂国のモリアーティを観劇しました。
ある時には市民、ある時には神への供物、ある時にはマスカレードの参加者、ある時にはハリボテの警官。 
おこがましいけど、なれていたらいいな。そう願いたくなる舞台でした。 




初演、原作の知識がないまま観劇し、あまりのクオリティの高さに2.5次元の概念が砕かれ、帰りに原作全巻買ったことはまだ記憶に新しい。 
こう書いてるってことはお察しの通り今回も、もっともっと期待して行っても良かった!!!!って言いたくなるような結果になったわけですね。 
そもそも、加わった新キャストや前回に引き続き精鋭ばかりのプリンシパルとアンサンブル、最高の舞台を作りあげてくださったスタッフの皆々様を前に不安に思うことが間違いだったので、平伏するしかありません。 





始まる前の、シーンとした劇場内。銀河劇場に凪いだ海みたいな穏やかなピアノの音が響いていて、それだけでもう気分は大英帝国。 
客の少なさから感じる寂しさとか、満員の観客席を見せたかったなとか、そんなことを思えばキリがないので今回は割愛。 
いつもみたいなザワザワした雰囲気がないのも、これはこれで世界に浸れて私はよかった。 

聞き慣れたOPが流れ、油断して聴き入ってたところOp.2verに不意打ちされ、ああこれだこれを観にきたんだ、ずっとずっとこれを観たかったんだともう滾りすぎて瞬きせずに魅入ってしまい。OPは耐えたのにその後の、まるで満員入っているかのような拍手の圧に視界が潤みました。 
拍手を贈るそのうちの一人でいられる幸せに涙が出てしまった。そこで?って感じですが、ほんとにそこで。 



初演、最後は表題曲を全員で歌い終わりでしたが、それを抜かすとジョンの圧倒的光のうたがラストだったのをよく覚えていて。 
始まりの大英帝国を表す歌の後、またすぐ表題曲を歌うのかと思いきやジョンくんのソロで始まったので、ジョンくんで終わってジョンくんで始まるのニクい演出だなあと感じました。 

ほんとにも〜〜〜ジョンくんて憂国のモリアーティ随一の光の人だから眩しい!!キラキラしてる!! 
初演ではわんこ感増し増しだったのに今回はエピソードも相まってめちゃくちゃイケメンになってて(元々ジョンくんはかっこいい)しんどいたまらんです。 


一幕はバスカヴィル、人狩りの話と列車事件の話。 
ここの下りはいくつか初演でやっていたのでどう演出されるのかと思っていましたが、ちゃんと三兄弟の愛と絆の激重ソング(語弊)やってくれて感謝しかない。 
初演を経た上でまたウィリアムとルイスが「悪い奴らをやっつけろだ!」と言い合ってくれるの、嬉しすぎる。 
噂によるとここでルイスくん兄さんって8回言ってるらしく、原作通りというかもはや通り越すレベルで兄さん強火担なの最高ですね。 
「私たち三人でジェームズ・モリアーティなんだからな」とアルバートが言うところ、ここすごい好きで……今後犯罪卿が自分達だと明かしていく場面ごとに、三人がトライアングルになって出てくるんですよ。 
えっもうそんなの興奮しちゃうじゃん、改めて「三人で犯罪卿」なんだと感じる素敵な演出。 


OPから本編へ入るとこ、アンサンブルの歌ですっと「あいつが犯罪卿の窓口の男」と紹介してくれて、まるで私たちも一市民であるかのように感じ違和感なくモリミュの世界に入ることができました。 

 

舞台に限らずどの作品でもそうだけど、脇を固める人達によってやっぱり印象って大きく変わると思うんです。 
そもそも「ここは大英帝国」から始まる一番最初の曲もアンサンブルからだし、このアンサンブルの人たちが完成度高すぎるからこそ見応えも聴き応えもあるんですよね。 
すごいの一言で片付けられないけど、すごいと素晴らしい以外に言える言葉がないのが悔しい。 


モランがフレッドに、ウィリアムへ思ってることを「恐れずに」伝えろって歌うシーン。呼びかけるように諭すように励ますように背中を押すように歌っていて、兄弟分って素晴らしいな頼もしいな…とほっこり。 
フレッドの意を汲んで人狩り貴族を倒しに行く中、フレッドが一瞬嬉しそうな顔になり、その後覚悟を決めた顔になるのすごく良かった。 
歌いながら倒すシーンめちゃくちゃカッコよくてこんなのみんな恋しちゃうじゃん……ってなりました。助けられておぶられた子は確実に初恋フレッドくんでしょ?赤澤くんめちゃくちゃ歌上手くなってて声聞くたびにドキドキしてしまった。 

モラン大佐はもうだって、あの人、あんなのずるいよ!!!! 
「同じ人の腹から生まれ出て、なぜ人はこうも醜く成り果てる」のところ、泣いた。いや推しキャラというのもあるのですけど、なんだろう心が揺さぶられる歌い方じゃないですか。ずるい。 
再三言われてるし本人も仰ってましたが井澤さんは首から下が足だし長さ5mあるし、膝が天井つきそうだなって思うくらい、足が、長い。 
「セバスチャン・モランは死んだ」の歌い方もすごく好き。ただ事実を述べているだけのような淡々とした歌い方が余計グッとくる。 


ウィリアムの「悪魔よ地上から去れ」の高音連続シーンは痺れたなあ。初演の「貴方に裁きを」のような感じ。 
鈴木さんの脳天突き抜けるような高音がたまらなく心地よくて、こんな裁きなら受けたいとさえ思える。 
しかも軽やかに踊るように息一つ乱さない殺陣、これがまた超絶かっこいい。ウィリアムの殺陣見れたの本当に嬉しい!!!ありがとうございますウィリアム様美しかったです。 
「我は悪魔狩りの処刑人」とか「天使の剣より鋭き刃」とか、悪魔を根絶やしにするための悪魔になるその覚悟がひしひしと伝わるのがまた切ない。 
裁きを下して根絶やしにしたら悪魔と化した自分達も地上から去るんだもんね…と胸が苦しくなってしまう……。 

原作にはないけど加えられた、バスカヴィルの処理を兄様がやる!というのめちゃくちゃ良かった〜!!! 
お兄ちゃんさすが!よっMI6! 
こういう小さな改変があるからモリミュは最高なんです。 
原作の補完をして物語と絡めるのが上手いですよね。邪魔にならないしむしろスムーズ。オリジナル要素と原作の忠実さ、その塩梅が見事。 

月夜の誓いはね、突然いきなりモリアーティ陣営の皆が誓い始めて驚きでショートしました。 
なんのご褒美シーン? 
初演の〝誓い〟が永遠リピートして聴けるくらい好きなので、モリアーティ側の絆を表すような、悪の道を暗い道を共に進むその覚悟が伝わる曲を入れてくれたの、本当に嬉しかった。 

初演でルイスのくだりやっていたからここではウィリアムのフレッドへの気のかけ方とかフレッドの感情など、フレッドだけに焦点当てやすくて良い改変だったなと思う。ミュならでは、お見事。 




そして列車編に続きます。 

原作既読の方は思ったであろう、列車シーン! 
「なんでモランとフレッド乗ってるんだ!?」 
ここ素晴らしすぎる改変で、家なら大声で叫んでましたね。私に理性とモラルがあってよかった。 
演出脚本天才すぎる。ありがとうございます。 

シャーロックが近づいてきた時の張り詰めた空気とか、三人共シャーロックを警戒してシャーロック絶対殺すマンになってるのめちゃくちゃ楽しかった。心底嫌そうなルイス可哀想で可愛い。 
その反面、ウィリアムはにこにこ涼しい顔で笑ってて終始楽しそう。 


「Catch me if you can Mr.Holmes」 
のシーン、それまではモランが「お前何言おうとしてんの?」って様子伺っていたのにその言葉を聞いた途端少し笑ってて。「まあそれでこそウィリアムだな」って顔するの本当にやめてほしい。やめないでいいです。 

皆の心配もどこ吹く風、推理対決に至っては止めようとするモランを手で制して挑んでるからね。 
ウィリアム、シャーロックに対して好戦的。 
自分が選んだ探偵に対して興味津々だし、純粋に自分と同じように渡り合える頭脳と出会え、対等に推理し合える関係でいられることが嬉しいんだろうな。 
ここ、シャーロックもウィリアムも目が爛々としていて最高に見ててワクワクしちゃう! 

推理シーン、すっっっごい早口なのにしっかり聞き取れてなおかつ楽しいと感じられるのって最強すぎない? 
「なぜならウィスキー🎶」「目覚めてしまった🎶」「突発的な犯行です🎶」 
のハモリがめちゃくちゃ好き〜〜〜 
息ぴったりだし二人共楽しそうだし、疾走感があって聴いてて心底楽しい。でも歌う側からしたらとても難しそう。 


ここで少しホームズ側の話をしたい。 
今回シャーロックは犯罪卿という大きな謎に取り憑かれていて、薬に頼っていたときのようなかなり情緒不安定な状態に。 
この演技が凄まじくて、見ててこっちまで不安になりそうなくらいの気迫が伝わってきた。 
それを支える助手のジョンくん。 
少し笑いを誘いつつも、この二人の間のゆっくり変わっていく柔らかな雰囲気や、喧嘩し仲直りするという流れにより一層強固になる絆がまたいい。 
平野さんのシャーロック、話し方歌い方にクセがあるけどそれが邪魔にならないどころか、シャーロックのキャラとして成り立っていて本当にすごいと思う。 
ジョンはシャーロックに出会ってから変わらずずっと「シャーロックは光だ」と言い続けてるけど、シャーロックにとってはジョンの存在こそが光なんだよな、本人が気づいていなくても。 
だからこそウィリアムは「二人は良いコンビ」だと言った。 

ウィリアムはシャーロックを闇夜を照らす光と言うし、ジョンはシャーロックを一筋の光と言うけど、そのシャーロックを輝かせるのは極上の謎を与える犯罪卿とシャーロックを照らし続けるジョンくんなの、最高でしかないでしょ。 







二幕は今回のタイトルにもなっている醜聞編。 
我らがアイリーン・アドラー様とマイクロフトお兄ちゃんから目が離せない話です。 


あのほんと、ボヘミアの陛下無理なんですけど、かっこよすぎてリアコになってしまう。立ち居振る舞い?がかっこよすぎて、目が釘付けになった。 
なのにアイリーンめちゃくちゃ可愛いし美しいし、本当にモリミュくんには信頼しかないですね。 
マイクロフトにタジタジなシャロが本当にThe・弟!って感じで可愛かったし、アルバートとの兄同士腹の底を探るような掛け合いとかも楽しかった。 


醜聞編で一番驚いたのは、原作では一ページの一コマの説明で終わっていたシーンをもーーーう広げに広げて綺麗にぎゅっと元の話と絡めたところ、ここに尽きる。 
ウィリアムたちをどう登場させるかと思っていたら、まさかこうきたかと。ここの展開は私みたいな既に原作を知ってる人もエッ!?と前のめりになったのでは。 
上手く絡めてくれたお陰でだってほら……橋の踊り子ネタでもあるフレッドの可愛い女装も見れたし…………。 
ちょこちょこ色んな話からネタを持ってきてくれるの嬉しい。ルイスがモランにちょっと口うるさかったりとか、それを流すモランとか。 


それにここでモラン大佐のアフガンの話と絡めてくるとも思わなかった……流石に油断していた……華麗に息が止まりました。危うく銀劇が墓標になるところだった。 

ここで好きなのは、レイモンドを前にして少し躊躇の見られた大佐が「俺とやってることは変わらないくせに!」と言われた瞬間に、すっと冷めたような、一歩引いたような冷たい表情になったとこ。 
アフガン戦争時代のベンガル第二工兵隊モラン隊長、の気持ちが脳裏をよぎったままレイモンドと対峙していたのに、それを言われた瞬間に「MI6所属、殺しのライセンスを持つ六番目の男」に一瞬にしてなってしまうところ。 
「ある男に忠誠を誓った」から「俺はお前とは違う」なぜなら「自分の命などその男のためならいくらでも捨てられるから」で「自分の命はその男の理想の世界を叶えるためにあるから」なの、あまりにウィリアムへ心酔しているし、ウィリアムと自分達の悲願を覚悟もくそもないただの傲慢な野望と一緒にしてくれるなよ、っていうさ〜〜〜もう〜〜〜カッコよすぎない!?!? 
なんの心構えもせずこのシーン見たから夢見てんのかな?って何回見ても思いました、友人も見たって言うから集団幻覚かもしれない。 


あとはもうアルバート兄様がただただ美の化身だったことしか覚えてないです。 
今回兄様がウィル、ルイス、って沢山呼んでてにこにこしちゃった。兄様の魂の同志だもんね。 

シャロがアイリーンをどう救おうか試行錯誤して犯罪卿の元へ向かう所も緊迫感があってよかった。 
あの時のシャロは、アイリーンの命を助けることが出来る策ならきっと何万通りも浮かぶんだと思う、浮かんだんだと思う。 
でもその案その策はその場しのぎのものばかりで、それでは「本当の意味でアイリーンを守る」ことができなくなる。 
推理し予測し未来を見る、シャーロックが天才でまた相手の犯罪卿も天才だからこその葛藤。 
俺が守ってやる、と言った言葉が宙ぶらりんになりそうな時に、やっぱり俺では守れない、ならばとちゃんと分析して犯罪卿に改めて取引を挑むシーンは本当にたまらなくて。 
犯罪を企てる者と犯罪を暴き裁く者、絶対に交わってはならないはずの二人はお互いだけにしか分かり得ない信頼があるんだと思う。 
そこがしっかり舞台で描かれていて、なぜか涙が出てきた。‬ 

生きてさえいればまた会える、けどもうアイリーン・アドラーという人にはシャーロックは会えない。それでもアイリーンが生きていてさえくれればいいと言うシャロ、ここがまた切ない。 
(ところで手紙を燃やす仕掛け、凄かったね!?) 


「謎なき謎を暴きはしない」とシャーロックをウィリアムが信じていることも、「お前しかこいつを守れる奴はいない」と犯罪卿をシャーロックが信じていることも、お互いがお互いを焦がれている状況が見ていて伝わってくるのがスゴすぎる。 





本当はもっともっと言いたいことあるけど止まらないのでこの辺で……。 
最後の二人のデュエットよかったね……。 

また配信を見たら感想出てくるだろうけど、配信見る前のこのモリミュに浸ったままの書きなぐった感想が一番いいかなと思うのでとくに追記はしません。 



これは自論ですが、2.5次元の舞台は原作の魅力をいかに伝えられるかが鍵だと思うので、原作未読の人にもきちんと魅力が伝わって、かつ原作を知ってる人にはより作品を好きになってもらえるものが理想だと思っています。  

演出はあくまでその為の手段であって、決して原作を邪魔するものであってはいけないと思うし、セリフや演出を改変に値するだけの説得力も理由も必要だと思う。 
モリミュはそこの落とし所も魅せ方も本当に上手。 
確かにモランの下りを入れたりとか少し駆け足だったような気もするけど、それはノアティック号にルイスがいたような感じだと思えば、きっとOp.3で大佐の過去もっと掘り下げてもらえるのでは!?と期待に繋がるのでいいです。 



舞台の補完に原作を読むのではなく、こんなに面白い舞台の原作を読みたいと思わせてくれる、素晴らしい舞台。 
本当に本当に至るところから愛を感じた作品。 

いつかこの情勢が収まったら、ぜひ客席も使ってまたいつかのように私たち観客を巻き込んで、モリミュの世界にもう一度、いや何度でも連れて行ってほしい。 
市民、神への供物、マスカレードの参加者、ハリボテの警官。なんでもやります。 



Op.3待ってます、来年スケジュール開けておくので絶対絶対やってください。 
絶対絶対行きます!!!!!!!!



またもや元気にモリミュロス。